清 酒  季 刊 誌 
鳳 鳴
ほろ酔い紀行  平成16年秋号

ナタ豆




丹波発 風の歌
赤い稲穂がなびく 古代の米の主流は赤米
 
  「丹波」の国名の起こりは、この地に降臨した豊受大神が、五穀の種をもらい、田畑を開いて蒔いたところ、瑞穂が田に満ちたので「あなにえし田庭(たにわ)なるかも」と喜んだことによる説が有力です。また、赤い稲穂が波のように風になびいている土地。「丹」は赤の意味であることから「丹波」と呼ばれるという説もあります。いずれにしても、丹波は稲作の先進地であったようです。
  「赤い稲穂」に疑問をもたれると思いますが、古代、米の主流は赤米でした。野生のイネは玄米の色が赤で、栽培化にともなって、現在の色に変わってきました。赤米は肥沃な土地でなくても育ち、籾の生命力は強いのですが、稲は倒れやすく、収穫量も白米に劣ります。さらに食味は、芳ばしさはあるものの、粘りが少なく、白米に遠く及びません。奈良時代には白米は宮廷で主食となっていたようですが、庶民は赤米を多く食していたと考えられ、江戸時代になってもかなりの面積で栽培されていました。

棚田の稲刈り
  ところが、明治時代になると、政府から赤米は「白米に混ざると食味が劣化する」とのことから、徹底的に排除されてきました。今でも赤米は、米として認められず、雑穀として扱われています。
  その赤米が近年見直されています。古代へのロマンもありますが、赤米は白米より鉄分、ビタミンB1、カルシウムを多く含み、特に鉄分は白米の四倍あって披露回復や貧血防止に効果があると言われることから、健康食品として注目されているのでしょう。白米9:赤米1の割合で混ぜて炊いたり、おかゆにしたり、もち米に混ぜたりとの利用が増えています。篠山でも栽培が復活しています。

あぜ道便り 〜手を休めてちょっといい話〜
■[「あぜ豆」想像以上の生育]
  黒大豆の枝豆を「あぜ豆」と呼ぶことがあります。いまでは黒大豆は、ほ場整備された田んぼ(20〜30アールの面積)一面に栽培されていますが、昭和50年頃まで、黒大豆はその栽培面積を増やしながらも田んぼの「あぜ」にも植えられていました。そうしたことから「あぜ豆」と呼ばれるのです。篠山地方では黒大豆が植えられていましたが、他地域では白大豆があぜでも栽培されることが多かったようです。
  「耕していないあぜで順調に生育するのか」と疑問をもたれる方も多いと思います。確かに田んぼを耕し、畝をたてたほ場で栽培した豆と比べると、根の張り方がやや劣るため、その木や枝は小ぶりとなります。しかしながら、あぜは水田とつながっていることから、水田ほど排水が悪くないので、想像以上の生育をするのです。

田んぼのあぜで育つ黒大豆
  さらに田んぼ一面で栽培するように、まとまって2、3千本植えるわけではないので、病害虫が大量に発生し難く、その駆除の必要性はなかったようです。農家にすれば、かつて「あぜ豆」は稲を栽培するなかで、さほど手間をかけずに獲得できる副産物だったことでしょう。
  たわわに実った稲の傍らで、濃い緑色の葉をつけていた「あぜ豆」が姿を消していった理由は、転作の必要や黒大豆の需要増大によって、改めて専用のほ場で栽培され始めたことのほか、昭和50年代を中心に進められた「ほ場整備(構造改田)」の影響もあります。重機による改田であぜが固く、またのり面が広くなったことによって、通り易くなったものの、作物の栽培には適さなくなったのです。

うんちく傾け盃傾け
[招かれる側のマナー]
 
大変な迷惑をかける。あるいは、家族の非難を浴びるとはわかっていながら、酒を飲む仕上げとして洒落た店より友人の家や我が家を最終地点にしてしまうことがあります。交通網の整っていない田舎ではなおさらです。
  まず、招く場合は、たとえ10分前であったとしても家に連絡を入れる気遣いは最低限度必要があります。あまりに突然来られたら、家族の怒りは倍増してしまいますし、酒飲みにとってうれしいのは、腰を下して間髪を入れずにお酒が登場することだと思います。何か体裁の良いものを用意しようとして時間をかけ、間があいてしまうと、招かれた方のうしろめたさが頭をもたげてくるのです。笑顔でもてなしてもらいながら一升瓶とコップ、そして枝豆がさっと出てくるというのが最高ですが、あまりに行き届き過ぎると、その後も度々訪問されることになりかねません。
  また、招かれた方の一番大切なマナーとしては、帰る時間を決めておくこと。家人の「もっとゆっくりして」「泊まっていけば」を決して鵜呑みにしてはいけません。

丹波の言葉 〜こんなん知っとってか〜
[「ぐるめ」と「こされ」]

  食通のことを「グルメ」と言いますが、味覚の宝庫と呼ばれ食通に人気のある篠山での「ぐるめ」は、接続詞で、後に来る文章が否定的や逆の内容となります。
  例えば、「今年はきばって(がんばって)田んぼの世話をしたぐるめ、台風で収穫はさっぱりだった」、「大急ぎで迎えに行ったぐるめ、電車が遅れていた」というぐあいに「〜にもかかわらず」という意味で使います。
  これに対して「こされ」は、「夜遅くまで勉強しとったならこされ合格できた」というように「〜だからこそ」という意味で用いるのです。また、「○○さんならこされ助けられた」というふうに感謝の意を表すときにも使います。
  黒大豆枝豆や栗など、美味しいものがいっぱい登場する秋、この時期篠山には大変たくさんの方が来られます。「せっかく朝早くから(篠山へ)出てきたぐるめ」と失望させるのではなく、「篠山ならこされ」と喜んでもらえるように、逸品を用意しておもてなしをしたいと思います。


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